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映画やグルメなど、好きなものを紹介していきます

映画「愛を読むひと」時代に翻弄され生まれた愛のかたち

どうも ゆうですÜ
今回紹介する映画は
愛を読むひと

Ralph Fiennes, Kate Winslet, and David Kross in The Reader (2008)

素敵なラブストーリー・・・
ではありません!
どちらかというと痛切な社会派映画
ハッピーエンドではないのですが
かなり衝撃を受けた印象深い作品です

 

影山みほさんの映画解説総合メディア「MIHOシネマ」でも紹介されていますので、ぜひご参考ください

mihocinema.com

説明・あらすじ

原題:The Reader(2008)
アメリカとドイツ合作のヒューマンドラマ、歴史映画。
監督はスティーブン・ダルドリー、原作は1995年出版のベルンハルト・シュリンクの小説「朗読者」
第81回アカデミー賞で、ケイト・ウィンスレットが主演女優賞を受賞。

1958年、大戦後のドイツ。15歳のマイケルは、年上のハンナと激しい恋におちる。ある日、ハンナは彼に本の朗読を頼み、子供のようにその物語に聞き入った。以来、二人の間では“朗読”は繰り返され、愛はより深まっていったのだが、突然彼女は姿を消してしまう……。8年後、法学生となったマイケルが傍聴した裁判で見たのは、戦時中の罪に問われるハンナだった。彼女はある“秘密”を守るために不当な証言を受け入れ、無期懲役を言い渡される。唯一その秘密を知るマイケルは彼女を救えるはずだった。しかし――。


『愛を読むひと朗読者』日本版予告編 The Reader Movie Trailer

ストーリー(ネタバレ)

・主な登場人物
ハンナ(ケイト・ウィンスレット
マイケル(ダフィット・クロス/レイフ・ファインズ

第二次世界対戦後のドイツ、15歳のマイケルは路上で体調を崩していたところを、近くのアパートに住むハンナに助けられる。数日後、回復したマイケルはお礼を言うためにハンナのアパートを訪れる。冷たい態度のハンナだったが、マイケルが石炭運びを手伝うと体中がすすだらけで汚れてしまい、風呂に入れてもらう。しかしふたりはそのまま体の関係を持ってしまい、美しい年上の女性に夢中になるマイケルと、感情のまま行動するハンナは逢瀬を重ねていく。

Kate Winslet and David Kross in The Reader (2008)

しばらくしてハンナは、愛し合う前にマイケルに朗読してもらうことを好むようになり、ふたりの秘密の関係の中で、朗読が新たな日課となる。二回りも歳が離れていたが、ふたりの愛は深まり、小さな旅行に出かけたりと、幸せな日々を過ごすのだった。そんなある日、車掌として働いていたハンナは事務職への昇進が決まるが、彼女は仕事を辞めアパートから引越し、マイケルの前から突然姿を消すのだった。マイケルはハンナのことを引きずりながらも、それっきり会うこともなく、大学の法学部へと進学する。

Kate Winslet and David Kross in The Reader (2008)

ある日マイケルはゼミの研究で、アウシュビッツ裁判を傍聴するために裁判所を訪れる。そこで被告人である強制収容所の元看守達の中に、ハンナの姿を見つけるのだった。他の看守に罪の責任を押し付けられたハンナは、筆跡鑑定を求められるが拒否する。マイケルは、ハンナが一度も本を読まなかったことや、以前自分が残した手書きのメモの内容を知らなかったことなどから、彼女が非識字者であり、それを隠していることに気づく。しかしマイケルはそれを証言せず、ハンナは有罪となり刑務所に服役するのだった。

David Kross in The Reader (2008)

大学卒業後、マイケルは結婚し娘を授かるが離婚してしまう。今でもハンナを忘れられないマイケルは、一度も面会に訪れないが、朗読を吹き込んだテープを彼女に送り続けるようになる。テープのお礼を言うために、読み書きを覚えたハンナはマイケルに手紙を送る。そしてマイケルはハンナの身元引受人となり、初めて面会に訪れるのだった。お互い歳を重ね、白髪となったハンナ。マイケルは出所後の生活の準備をするが、ハンナは出所前日に首を吊り自殺してしまう。遺書を受け取ったマイケルは、成長した娘とハンナの墓を訪れ、娘にすら閉ざしていた心を開き、ハンナとの過去を初めて語り出すのだった。

Ralph Fiennes in The Reader (2008)

感想(ネタバレ含む)

なんとも切ないーーーー!衝撃的な作品でした!
これが単なるラブロマンス映画だったら
世間を気にせず愛する人を救うために、マイケルが証言してハンナを助けるか、
少なくとも出所後やっと添い遂げるふたりで終わるか・・・と思うのですが
現実そんな甘くありませんね

Kate Winslet and David Kross in The Reader (2008)

ひと夏の、そして禁断の恋
ストーリーでは割愛してますが、マイケルの家はかなり厳格ですし、
法律家を目指す彼の身からしたら、ハンナとの関係は若さゆえの過ちのようなものでしょう
ハンナも世間一般の目からしたら
未成年の少年をたぶらかすなんて!って非難囂々だと思います

しかし彼女が全く悪女に見えないこの映画
その理由は、彼女の「読み書きができない」という秘密が大きいと思います
つまり、まともに教育を受けてこられなかった彼女は、世間的な善悪の判断ができない
思いのままに行動してしまう純粋な子供のようなもの
強かで凛とした彼女は、
裁判のときも、何が悪いのかさっぱりわからない、という感じでした
彼女からしたら、ユダヤ人は悪だと教えられ、従順に仕事をしたまで

Kate Winslet in The Reader (2008)

もしマイケルが裁判で証言したら、ハンナとの関係が暴かれる可能性もあるし、
ハンナ自身も、非識字者であることを必死に隠していますから、彼女の意志を尊重したともとれます
あれだけ愛し合っていたのに、突然姿を消されたという、やりきれない怒りもあったかもしれません
いずれにせよ、そんな重大な選択を、社会を知らない学生がなかなか選べるものではないはず

しかしなぜハンナはそこまで非識字者であることを隠したかったのでしょうか
ものすごいコンプレックスを抱いているともとれますが
彼女がルーマニア文字文化を持たない少数民族である、という説があります
激しい迫害を受けてきた民族で、非識字者であることが知れる=死に直結するという概念のもと生きてきたとしたら、何が何でも隠さなければなりませんよね

Ralph Fiennes in The Reader (2008)

しかしその後も面会に行かず、お礼の手紙にも返事をせず、
ただ朗読のテープを送り続けたマイケル
孤独なハンナにとってはそれでも嬉しい贈り物ですが
ハンナのために、というよりは罪悪感から逃れるために、自分のために送っていた
と私も思ってしまいます
ただ、ストーリーでは割愛していますが、ハンナの残した僅かながらのお金を
強制収容の被害者の女性に託そうとし、ハンナがただの悪者ではないと主張するシーンもあります

 

ただ、面会にて再会したシーンは、なんとも切ないものでした
マイケルの愛の乏しい淡々とした態度・・・
彼にとってもずっと忘れられない大きな存在であったにも関わらず、
親しい人はマイケルしかいない天涯孤独なハンナからしたら、絶望的な空気です
もう昔のようには愛し合うことができないと悟ったのか、
ふたりの関係は若い頃の綺麗な思い出だけにしたかったのか、、
それよりも、教養を身につけるとともに、自分の犯した過ちの深さを知り、
一生罪を背負おうと、死を選んだのかもしれません

Kate Winslet in The Reader (2008)

マイケルもまさか自殺するとは思いもしなかったでしょう
裁判で助けることができず、最後もまた助けることができず
抱いている愛情に正直になれなかったために、愛する人を失ってしまった
その後悔からか、距離を取られていると感じている娘に、真実を語り出す結末

この時代でなければハンナは生きられたかもしれない
しかしこの時代だからこそ、ふたりは愛し合ったのかもしれない
他の結末も考えたくなりますが、現実的に考えると絶妙にしっくりくる結末で、すごい作品です

 

青年マイケル役のダフィット・クロス
最初の愛に溺れる無邪気な青年から、一人の女性として本気で愛する、
そして裁判で苦悩する大人へ段々と成長していく様が、素晴らしい演技力でした!

ハンナ役のケイト・ウィンスレットも、謎めいた奥深い役柄を熱演です!圧巻!
しかし彼女は、過去影のある強かな女性役、そして禁断の濡れ場がものすごく似合いますな笑
タイタニックはもちろん、色んな作品を観ましたが、個人的にこの映画が一番美しい
ケイト・ウィンスレットの他の出演作品はこちら

yumak0.hatenablog.com

大人になったマイケル役はレイフ・ファインズ
あまり似てないところはさておき笑、優しい感じと物憂げな役はピッタリですね
彼の他の出演作品はこちら
ちなみにこの作品も愛する人を救えないですが、最後まで健闘する素敵な役柄です

yumak0.hatenablog.com

原作を読んでないからかもしれませんが、
明確な答えがなく、観る人によって解釈が無数の、大変奥深い作品でしたÜ